ペピン結構設計『東京の米』
- そして舞台は東京。米屋の主人がなくなり、跡取りの三人兄弟と米を産む女、その妹の「米」をめぐる物語。
- ペピン結構設計はいつも胸キュンやせつなさを描くのがすごく上手だ。『東京の米』はそれに加えて、人間の体温を感じた。大袈裟に言えば、人が生きるってことをすごく感じた。その意味では彼らにとってこの作品が現在のベストバウトなのではないか。
- 『東京の米』とは毎日クソみたいに生み出される「情報」に埋もれる「作品」でもあり、ならば僕が感じた体温とは、実は作家のものなのかもしれない。(いや、申し訳ない。)
アルカサバ・シアター『アライブ・フロム・パレスチナ』
- 演じられているのは彼らの日常を綴る、大きく分けて六つくらいのストーリー。見て衝撃を受けた。まず、生活を構成する要素が我々と全然違う。学校で子供の発する言葉は「マシンガン」「炸裂弾」など血なまぐさいものばかり。東京でプレゼントといったら洒落たアクセサリーや時計なんかが相場。しかし(やや脚色があるとしても)パレスチナでは催涙弾の空き瓶や銃弾。「吹き抜け」の屋根の下をミサイルが飛んでるなんて、マンガで主人公がラーメン大好き小池さんの家を横断して逃げるのと同じくらい日常茶飯事。
- 生活のモーメントは我々と変わらないから、いかに彼らが戦争と隣り合わせに生きているかをひしひしと感じざるを得ない。彼らにとっての日常は、我々にとっての非日常(ニュース)である。その意味で、彼らにとっての「ニュース」は、もはや存在しない。
未来世紀ブラジル
- TattleとBattleのスペルミスから始まるSF。主人公は情報省の記録部門に勤めるエリート。しかし仕事より大事なものがあるようで親の七光で昇進の話が来ても、断る。その頃主人公は夢に出てくる女神にぞっこん。ある日ある女性のデータが目に止まる。なんと女神にそっくり。主人公は詳細を知るために昇進を受けることにする。ところがTattleとBattleのスペルミスは大変な事件につながっていた。
- ストーリーを読んでも展開がつかみにくかったが、管理社会のイメージがとてもよく出ている。「敵」が日本の武士の甲冑なのはなんでやねん。最後のシーン、音楽の明るさだけが救いだ。
- http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/B00005R22R/ref=pd_huc_sim_1_2/249-2481692-8427559
- ちなみに今、中村俊輔が出てるキリンビールのCMの曲がテーマソング。
※アリー・バローゾの「ブラジル」という曲らしい。
http://www.kirin.co.jp/about/toku/ad/TR/index.html
ラビア・ムルネ&リナ・サーネー『ビオハラフィア』他
- http://www.anj.or.jp/tif2004/program/rabi.php
- どちらかというとパフォーマンス。演劇にも見えるが。
- リナ・サーネーによるカセットテープの録音によるリナ・サーネー自身へのインタビュー。質問は詰問に変わり、話は関係のないプライバシーへと気づかぬうちにすり替わる。はじめ抵抗し、テープを戻して再開、こんどは従順になる。この繰り返し。そのうちリナ・サーネー自身もすり変わる。ラストは唖然。
- レバノン出身の二人。旅行ガイドによると、レバノンは近年、治安が上向いてきているという。観光産業も復興の兆しを見せ、再びベイルートに繁栄をもたらす日は遠くないかもしれない。それでいても、イスラエルが南にある脅威は変わらず、中東は戦争に隣り合わせているのだ。レバノンのそれは仮に「戦後」に近いとしても、常に誰が敵かを意識しなければならない苦しみ、問題が現在進行形であることをつきつけられる。最後に感じる居心地の悪さ。一気に引き込まれる。
- ずっとこれがなんだったのか、うまく整理がつかなかった。実はまだ決着はついていない。
- しかし、アルカサバ・シアターを見ることで整理がつく。http://d.hatena.ne.jp/shoshiro/20040226
- 公演ではパフォーマンスの前に『SideA/B』というショートフィルムが上映された。タブーとアイデンティティの間の話?