沢木耕太郎『テロルの決算』(新潮文庫)

  • 1960年、日比谷公会堂で一人の政治家が刺殺された。当時の社会党委員長・浅沼稲次郎に刃を向けたのは、17歳の右翼少年・山口二矢(おとや)。浅沼はなぜ殺されたのか。山口はなぜ殺したのか。なぜ殺せたのか。二人の生涯を当時の政情を交えて掘り起こす沢木の筆致は緻密で凛としている。
  • 旅をあまりしない僕だが、ピューリッツァー賞を取ったこの事件の写真は見たことがある。かつて政治を志したことがあるので、山口にも浅沼にも感情移入できる余地が小さくはなかったこともある。他人の人生にちょっと関心もあった。そして沢木の文章がぐいぐい次を読ませてくれたことも大きい。だから人気の高い『深夜特急』よりも、僕にはこちらのほうが肌に合ったんだと思う。