ホテルビーナス

  • 「ビーナスの背中を見せてくれ。」北の町にあるビーナスカフェに、新しい客が来た。その奥では、それぞれに事情を抱える人々がひそやかに暮らしていた。
  • いまノリに乗ってる広告クリエイター、麻生哲朗の脚本と聞いて、見てみた。麻生哲朗にはフランス語で詩を書いたCMもあるが、今回の映画の科白はほぼ全部韓国語。新鮮な異国情緒が出ていた。葛西薫のトーンは北アジア的。それに対して麻生哲朗のそれはヨーロッパ的。(ただしロケ地はウラジオストック。)
  • LOVE PSYCHEDELICOの曲をモチーフに、ところどころ音を消したり、素早くイメージを挿入したり。歯切れのよい構成が、映像の洗練されたテンションを上げている。全編サビに聞こえる近年のポップスのようで、ぜんぜん飽きさせないのはさすが。(そう言えば麻生さんはCHEMISTRYの作詞もしてたな。)伏線もきれいに埋まっていて、スマート。ところどころの言葉もきれいに決まっている。
  • チケットを買うと、ハンカチを渡される。「あなたは、どの部屋で泣きますか?」というキャッチコピーからも、そうとう泣かせる自信があるんだろうよ。イヤミだなあ、とか思っていた。すみません、今まで見た映画の中で一番泣いたかもしれません。上映後も鼻をすする音がところどころに。
  • なんか自分に重ねやすいんですよ、それぞれの「事情」や気持ちの揺れ方が。冷静になるとくやしいですね、まったく。素敵な映画だったけれど、ため息が出ます。

隣の隣にいた女の子なんかはケロッとしてたけど、どうだったんだろう。僕は、回りの人が泣きまくっていた『グリーンマイル』に興ざめし、『ダンサー・イン・ザ・ダーク』では涙ではなくアドレナリンを流すようなやつだ。やはり、人のグッと来るツボってそれぞれに違うんだろか。